オーストラリアに住み、日本の未来を考える
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こんにちは。ジュークです。
早速ではあるが、海外在住年数が長く、2018年に豪州移住となってから5年となる今も、やはり自分の母国日本のあれこれについては無意識に情報収集してしまうことが多々ある。Yahoo! JAPANもちょくちょく見ちゃうし、トゥイッターで日本の時事ニュースをチェックしてしまうこともある。
その中で気になったBBCニュースから配信されている記事で、気になったものがあったので軽く紹介と、海外在住歴が長い自分なりに思うことを簡単に綴ってみたい。
出羽神に聞こえてしまったら申し訳ない。
日本社会で感じる閉塞感が言語化されている
私がこのBBCの記事を読んで思ったこと、ずばりである。
この記事の筆者は1993年から日本に在住しておられるようで、この度日本での勤務を終え母国・イギリスへ戻る前にこの記事を投稿したようである。
筆者が触れているように、1990年〜2000年代初期の日本は「世界が羨む未来」そのものを生きる社会であった。日本は世界でも「お金持ちクラブ」に文句なしで入っていた国であるし、三菱・日立・ソニーといった日本企業は世界を席巻する勢いであった。
しかし、1990年代のバブル崩壊が運命の分かれ道となってしまった。以降の日本は、実質賃金も30年間伸び悩んでいる。中国にGDPで抜かれて久しいが、ここ数年で一人当たりのGDPでも韓国・台湾に追い抜かれた。今や旧共産圏の東欧といい勝負を繰り広げようとしている。
昨年は、台湾の半導体大手TSMCが熊本県に工場を建て、日本の相場で考えると高い給与水準が話題となった。
BBCの記事においては、政府や公共事業によるお金の使い方、行政における「無駄」の多さ、「海外」へのアレルギーとそれによる移民受け入れの停滞、国家全体における高齢化とそれに伴う労働人口、特に意思決定層の高齢化などが日本経済そして社会の停滞の要因として語られている。
それは私も感じることが多いし、おそらく誰もが一度は感じたことのある事だと思う。私も過去、以下の記事で似たようなことに触れてみた。
避けては通れない少子高齢化の問題
偶然にも数週間前、Youtubeのおすすめで以下の動画が表示され、視聴した。
国家の未来予測をする時、色々な指標やデータ・見解があるとされているが、「最も数字としての信頼性が高い」という側面で見るとそれはどうやら人口統計らしい。理由は簡単で、いきなり生まれる子供の数は増えないし、死亡数も突然増えたり減ったりしないし、人は突然消えたり現れたりもしないので、たとえば「50年後の人口ピラミッド」がどのようになっているか、などの予想は、経済や株価などに較べれれば格段にしやすいと言える。
日本の少子高齢化が叫ばれて久しい。色々な意見があると思うし、感情的になりやすい内容でもある。事実とデータを元に考えるという側面では、日本の少子高齢化は不可逆的に進んでおり、それを止める具体策は誰も持っておらず、実際の実施できるものも現時点ではない、というのが現状ではなかろうか。
確かに、税制の見直しや一時金の給付、育児休暇制度の充実などにより一定の成果は出ていると考える。しかしながら、少子高齢化は明確にわかりやすい原因が1つあるわけではなく、社会的・経済的・文化的・歴史的要素が複雑に絡み合って起こっている現象だというのが私の考えだ。なのでお金をばら撒いたからといった出生率は突然増えないし、育児休暇を1年と法律で定めても突然人は子供を産もうとは思わない。
おそらく、現実としては政府や自治体による出生率の向上の取り組みををはるかに上回るペースで少子高齢化は進んでおり、結果的に国家としての少子高齢化の荒波は止められていないと考える。
人口が増えることが絶対的な正義ではないとは思うが、人口は国力であること(それはアメリカ、中国やインドを見れば明らかだ)、そして人口がその国経済力をかなりのウェイトで影響することは事実であろう。「中堅国家でも一人当たりの豊かさを高めれば良い」という意見もあるし、実際にオーストラリアや北欧などの国々はその路線を選んだ(というか選ばざるを得ない)ことにはなる。
そして何より、未来を作る子供の数が減るというのは社会の活力という意味でも、政府やメディアが大好きな「イノベーション」を引き起こすであろう若者の絶対数が減るという意味でも、プラスなことよりマイナスなことの方が多いのではないだろうか、というのが個人的な思いだ。
BBCの記事では、政治の高齢化とそれによる世襲の拡大も指摘されており、個人的には面白い観点だと思った。やはり、意思決定層にはある程度の経験を積んだ人材というのが望ましいのだろうが、「適年齢」というのはやはりあるのだろう。
あまりに意思決定層の高齢化が進むと、BBCの記事の指摘の通り「変わることへのスピード感」が失われることは否定できない。特に変化の激しいこの時代ではなおさらかもしれない。
日本の未来を思う
BBCの記事は最後、このまま日本が衰退しその栄華は失われてしまうのか?それとも第二次世界大戦の焼け野原から奇跡の復興を遂げたようにまた世界の表舞台にたつ日々が来るのか?という問いを以下のように投げかけている。
After a decade here I have got used to the way Japan is and come to accept the fact that it is not about to change.
Yes, I worry about the future. And Japan’s future will have lessons for the rest of us. In the age of artificial intelligence, fewer workers could drive innovation; Japan’s aged farmers may be replaced by intelligent robots. Large parts of the country could return to the wild.
Will Japan gradually fade into irrelevance, or re-invent itself? My head tells me that to prosper anew Japan must embrace change. But my heart aches at the thought of it losing the things that make it so special.
Japan was the future but it’s stuck in the past (BBC)
私も海外在住歴が長いとはいえ、やはり日本人としてのアイデンティティと誇りは持っているため、後者であることを願っているし、個人としても微力ながら何か貢献したいと思っている。
日本でサラリーマンとして働いていた時も、豪州移住後も仕事の関係で日本企業と関わることがある時も、やはり思うことがBBCのライターが書いた通りのことで「日本は当面変わることはない」ということだと思う。確かに社会問題は山積み(これは日本に限った話ではない)だし、それは経済問題にも波及して30年も経っている(これは日本特有の問題になりつつある)が、それでも大きく国家としての舵を切ろうということはまだ起こっていないように思う(これが日本の課題にように思う)
「変わること」が絶対的正義だとは思わないが、「時代のニーズと状況に合わせて、適用していくこと」は国家でも社会でも企業でも個人でも必要なことだとは思う。そうしなければ滅んでしまうことだってあるだろう。