2025年1月〜5月のオーストラリア経済と株式市場

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こんにちは。ジュークです。
株式投資を2020年に初めてから、オーストラリア経済の動向に敏感になるようになりました。また豪州は米国経済の影響を強く受けることでも認識されており、米国経済のニュースも気が気ではありません。この記事では、今年の1月〜5月に起きた出来事でオーストラリア経済に影響のあったことをまとめてみみる。
Contents
豪州株式市場の動向

上のグラフは年始からのVanguardのオーストラリア主要企業ETF(VAS)(青)、日経平均株価(水色)、米国のS&P500(黄色)を比較したものである。
オーストラリアは大手企業だけで全てを判断できるわけではもちろんないが、年始比でプラスにすでに転じており、トランプ大統領就任直後の下落を回復したといえる。一方、日本と米国は回復傾向にあるもののまだ年始の水準に戻りきれていない。
さて、オーストラリア株式市場(ASX)および同国の経済に影響する・したものはなにか。
2025年1月〜5月:オーストラリア経済の出来事
米中関税戦争の一時休戦とASXの上昇
2025年5月、米中両国が90日間の関税引き下げ合意に達し、米国の対中関税が145%から30%に、中国の対米関税が125%から10%に引き下げられた。この合意により、世界の株式市場が急反発し、S&P/ASX 200指数は0.4%上昇し、2月以来の高値を記録した。
これはオーストラリアに限ったことではないが米中ともにオーストラリアの主要貿易国であるため、両国の落ち着きがプラスに働いたと言える。
政治的安定と政策の継続性
5月の連邦選挙において、労働党の勝利と政策の継続が確定した。アンソニー・アルバニージー首相率いる労働党が明確な大勝利を収めたことで、政策の継続性が期待され市場に安心感をもたらされたといえる。もう1つの二大政党である自由党は、オーストラリア初の原発建設や公務員の大幅見直しという名の削減を公約にかかげるなど先行きが不透明な政策が多かったため、労働党勝利による市場への安心感へやはり否めない。
勝利した労働党の政策により、インフラ、再生可能エネルギー、医療などのセクターが恩恵を受けると予想される。一方で、税制改革と投資家の懸念は継続することとなった。高額なスーパーアニュエーション口座への課税強化など、一部の税制改革が投資家の間で懸念される。
自由党の新リーダー選出と政策転換の可能性
5月13日、スーザン・レイ氏が自由党の新リーダーに選出され、同党初の女性連邦党首となった。レイ氏は党の再建と政策見直しを掲げ、特に原子力エネルギーやネットゼロ排出政策に焦点を当てる意向を示している。この政治的変化は、エネルギー関連株やインフラセクターに影響を与える可能性があります。
お世辞にも幅広い人気があったとはいえないピーターダッドン氏が落選したことで、自由党への期待、そしてオーストラリア政治への期待が市場にどこまでプラス要素を与えるか、見ものである。
中国経済の減速とその影響
中国のGDP成長率は2025年に4.6%まで減速すると予測されており、これは消費者心理の低迷や不動産市場の不振が要因とされている。特に鉄鉱石の需要減少が顕著で、価格の15〜25%の変動が見込まれる。 何を隠そう中国はオーストラリアの資源産業の最大の顧客である。必然的にBHPやFortescue Metalsなどの鉱業株は株価の下落やボラティリティの上昇に直面している。
以下のグラフは、All Ordinaries(オーストラリア経済株価指数)と、主要資源株の3つを比較したものである。黄色がBHP、水色がFortesue、オレンジがRio Tintoである。どれも資源業界においては世界有数規模を誇る巨大企業である。

BHPやRio Tintoは以前から再生可能エネルギーやいわゆる「資源」からの脱却を目指してきたためか、株価の下落は中国経済の原則から避けられなかったものの、鉄鉱石の一本足打法であるFortesueほどの下落は回避できた。9%以上の高配当株として有名なFortescueの今後はいかに。
インフレ沈静化と実質購買力の回復
厳しい出来事が続いたように思えるが、長く懸念が続いていた消費者物価指数(CPI)の上昇ペースが鈍化し始め、家計の「実質所得」が改善したことは大きい。これにより利下げ期待が高まっており、企業の借入コストを下げ、設備投資や成長を後押しすることが期待される。
また、株式の割引率が下がるため、バリュエーション(理論的価値)が上昇しやすくなるかもしれず、特に 不動産・ヘルスケア・テクノロジー セクターといったオーストラリアの大きめの産業は金利に敏感であり、株価上昇を主導したと考えられる。
おわりに
トランプ米大統領就任前後と関税戦争が始まった頃、オーストラリアも世界の例外なく株価が大幅に下がった。Superannuationは大丈夫か、投資大国である豪州における社会不安などもかなり懸念された。それが今となっては早くも2月の水準に戻してきており、逆に「なんであの時もっと買っておかなかった」と思っている人は少なくないと思える。
やはり投資は特に中長期の視点で考える必要性があると改めて学んだ5ヶ月間であった。