フルタイムで働きつつ子育てして、UoPeopleでMBAをとった話

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こんにちは。ジュークです。
2023年1月にUniversity of the People (以下 UofPeople)でオンラインMBAを初めて、2025年1月にようやく全過程を修了することができました。日本人の学生もそれなりに在籍しているようですが、知名度もまだまだのこのオンライン大学の体験記を自分のためにも、そしてUofPeopleを考えられている方の参考になればと思い、綴りたいと思います。
なぜUofPeopleなのか
私は2017年ぐらいからずっとMBAに興味があった。2つの理由が今振り返るとあると思う。
- 営業としての劣等感。学生時代は歴史学・国際関係学というビジネスとは程遠い科目を専攻したこともあり、上司や先輩、経済学やビジネス学を専攻していた同僚や知人に比べると知識が欠落していると感じていたから。まあ、MBAをとったからといって優秀な営業になれるかというと別の話だが基礎知識として持っておいて損はないと思った。
- 時間の有効活用・自己投資。スマートフォンが普及してからはSNSなどで無駄に時間をついつい浪費している感がすごかったので、何か形になるものをしたかった。これまでの3ヶ月や半年などの短期コースはいくつかやってきたが、時間をかけた学位を目指したいと思った。
そしてMBAについて調べ始めた。誰でも思いつく・たどり着くことだが、MBAの選択肢は以下に執着しがちだ。
- 米国大学のMBAをオンサイトで取得する。王道のやり方だが、青天井の学費と生活費。そして、物理的に米国へ移住することはコロナ禍と子供の誕生があった私には不可能な選択肢であった。
- 米国大学のMBAをオンラインで取得する。1つ目に比べると学費は抑えられるが、それでも年200万や300万のところが多い。一般的にMBA修了まで2年ぐらい通うことになるから400万〜600万円の投資である。奨学金などを取得すれば年100万〜150万にできないこともあるが、あまり気が進む費用感ではなかった。
- 欧州大学のMBAをオンラインで取得する。米国の教育機関に比べると価格は控えめな印象があるが、決して安くない価格設定。であれば米国でよくないか?となった。
- オーストラリアの大学のMBAを取得する。これも豪州在住者としては選択肢にあがった。一方、シドニー大学のMBAは年400万円などし、University of New Englandなどのオンラインコースであっても年100万円〜と決して安くない価格設定。またオーストラリアの教育機関でMBAをとってどこにいく?という疑念もあった。コモンウェルス銀行やANZ銀行へ行くのだろうか。私の目指すキャリア観とはちょっと違った。
- 日本のMBAを取得する。グロービスなどオンラインでMBAを提供しているところもある。だが豪州在住者が日本の学位を取るのはやっぱり違う気がした。
そんな中出会ったのがUofPeopleである。特徴は以下の通り。
- 学費がとにかく抑えられる。出願費用60ドル+36単位取得に必要なコース全てで4,860米ドル (現時点の為替レートで75万円)である。
- 米国政府に認められている教育機関である。U.S. Department of Education and the Council for Higher Education Accreditationの管理・認可である「Distance Education Accrediting Commission」を取得している。
- 完全オンライン。出張が多く、子育てで時間が読みづらい私には完全オンラインであることが条件であった。
- 自分のペースで課題ができる。もちろん完全に自分のペースというわけではないが、1週間単位で課題が出され、それらは1週間の間であればいつ提出しても良い。固定時間での拘束もないため、時間が読みづらい人たちにも優しい。時間がある時は前倒しにできたり、課題Aはいつ出す、課題Bはいつ出す、といった緩急がつけやすかった。
- 始められるタイミングで多い。1年が5学期に分かれており、どの学期からでも入学できる。いつでも始められる手軽さがある。大学によってはIntakeが年1回などのところもあった。
学費について安ければいいというものでもない。それでも、例えば500万円を学費として投資したとして私の状況では「それを回収できるのか?」「回収に何年かかるんだ」「その500万円分のリターンは期待できるのか」など考えると、正当化しづらい金額であった。また、子育てがとにかく時間を読みづらくしていた時期であったため、大学名の「箔」も捨てがたいことであったが、時間と場所の自由度がなにより優先された。
とりあえずUofPeopleを始めてみてどんな感じか見てみよう。そんな気持ちで2023年1月にMBAを始めた。
やってみた感想
長々と書くのもあれなので、長所と短所を箇条書きでまとめてみたい。
長所
- 完全オンラインであるので勉強時間と場所を縛られない。家ではもちろん、出張先や空港での待ち時間、子供の習い事中など色々なところで隙間時間を見つけては課題に取り組んだ。
- 経済的負担が少ない。学費がお手頃なため、金銭的な不自由は発生しなかった。不意な出費がある子育て家庭には優しい。
- ビジネスの基本を学べた。マーケティングや人事(HR)、ビジネス戦略、多文化な職場でのマネジメント、会計やファイナンスの基礎など幅広く「ビジネスとはなにか?」を学べた。前述の通り、大学でビジネスや経済、会計をやったことなかった身からすると学ぶことは多かった。逆に学士号でビジネス専攻された方には物足りないかも。
- 取る科目数を自分で選べる。1学期1科目はとらねばならないが、何科目とるのかは完全に自由(3科目以上はGPA次第だった気がする)。出張の多いだろうと思われる学期や子育ての忙しい時期は1科目、慣れてきたら2科目など自由度が高かったのはよかった。
短所
- 学生の「質」はまばら。私は偉そうなことを言える立場ではないが、特に入門コースでは学生の質が悪い意味でまばらだと感じた。学費が安いということは誰でも始めやすいという長所である裏返しで、適当な人もそれなりに入学できてしまうということにこの時気づいた。例えば、グループ課題などがあっても最終日まで何もしない人、ただ会話を荒らすだけで成果物を出さない人、グループチャットを無視し続ける人、様々であった。グループ課題はそれなりに得点比重を持つため、こう言う人がグループにいると成績に直結するイライラもあった。ただそう言う人とどう向き合うか、大学や教授にどう伝えることで自分が困っていることを伝わるかなどそういったスキルを試されていると捉えた。コースが進むにあたりそう言う人は最終的に篩い落とされていったので、2年目ぐらいから気にならなくなった。
- 科目の情報が古いことがあった。課題について書くトピックが2018年や2010年など、少し前のものがあったり使う教科書も最新の動向に追いついていないものがそれなりにあった。
- オンラインであるがゆえ帰属意識は薄かった。他の学生や教授、Program Advisorとも一度も会わずに卒業を迎えたので大学への帰属意識は最後まで強く持てなかった。学生時代を過ごした大学とはやはり違う感覚である。あくまでパソコンの中にあるバーチャル大学であること以上でも以下でもなかった。
- 大学の知名度は低い。少なくともオーストラリアでUofPeopleの知名度はないに等しいので、いわゆる「箔」がつくことはあまりないと思う。日本人の学生は1コース1〜3人ほど見かけたので日本ではオーストラリアより知名度があるのかも?
全体の感想
「やってよかったか?」と考えると、「やってよかった」と今は思える。ただやっている最中は何度も「やめたい」「もう限界だ」と思うことがあった。課題のボリュームがそれなりにあるのはもちろん、毎週課題が2−3つ締め切りになるストレスと時間に追われる感覚がきつかった。さらに、特に仕事が不意に忙しくなったり、急な出張が入ったりしたタイミング、子供の癇癪などで勉強しようと思っていた時間が潰れるなど、MBAと仕事と家庭をどう回すかで頭がいっぱいになった。
とにかく時間がないので解決策としては、時間のある時にできるだけ課題は前に進める、100点を全てにおいて期待せず得点比重に合わせて緩急をつける(場合によっては60点覚悟で提出してとにかく前に進める意識)、エッセイの骨格は早めに決めてしまい残り余った時間で肉付けをするなどした。
また、真面目な話UofPeopleは決してアメリカの一流大学ほどMBAをとったからといって履歴書に箔がつく話でもないし、前述の通りオーストラリアでも日本でも知名度は限定的だろう。「やっぱり無理して400万払ってシドニー大学のMBAとったほうがよかったかな」と考えることも正直あった。
ただ終わってみてよかったのは、MBAで得た知識、特にマーケティングや戦略のフレームワークはそれなりに実践でも使えている。特にアメリカ人・オーストラリア人とのプレゼン・社内交渉・ビジネスディスカッションの場では応用しやすいと感じた。おそらく近しい思考回路で会話することでお互いに話がまとまりやすいのだろう。これも人や環境によるのだろうけれど、「最終的には得た知識をどう使うか?」「どう自分のものにしていくか?」に着地する気がした。
個人的な自省は2017年ぐらいからモジモジしていないでさっさと始められばよかったという点だ。特に子供が生まれてからや、子供が小さい時にMBAをやることは決して推奨できないというのが私が経験から伝えたいことかもしれない。