外資ITで働いていて思う「オーストラリア」という国

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こんにちは。今日は少し真面目なトピックです。

オーストラリアに移住してきたら、縁というのは不思議なもので外資系IT企業に勤め始めました。日本で働いていた時は全く違う業界にいましたので、最初は混乱することも多かったです。最近はだいぶ慣れてきて、仕事を回せるようになってきました。

今日は、そんな最近盛り上がりを見せる外資IT企業で働いていて思うオーストラリアという国の立ち位置について書いて見たい。

アジア太平洋は「未知の市場」

そもそも、多くのアメリカ系やヨーロッパ系のIT企業によって、アジア太平洋はその人口とポテンシャルから魅力的な市場である。これには疑いの余地はない。

ただ、ビジネスはそんなに簡単ではない。裸で突っ込んでいって失敗した企業の例はいくらでもある。

極端な話、ただでさえ商売は簡単ではないのに、地球の裏側の世界で戦うことを得意とする企業は少ない。マイクロソフトやアマゾンといった超大企業ならまだしも、これから進出を考えるベンチャー企業にとってそのハードルは高い。下手をすれば大赤字を叩き出して倒産しかねない。

以下のような課題や悩みはよくあるものだと思われる。

・時差はどうやってマネージするのか?

・どういう商習慣なのか?

・そもそも英語通じないよね

・カントリーマネージャーなど、どうやって採用をしたり、適任者を探したらいいんだろう

・本国(アメリカやヨーロッパ)の常識は通じるんだろうか

つまり、言葉も文化もあまり慣れていない国で商売をするのは非常にリスクが高い。欲張らず北米だけで満足してればいいのでは?的な流れもあったりもするだろう。

アジア太平洋の足掛かり

それでも更なる商機を見出すため、アジア太平洋への進出を考える企業にとって足掛かりとする国選びが始まる。つまり、「アジア太平洋地域営業所」をどこに構えるかである。

よくある国・地域の候補として以下が挙げられる。

①中国

アジア太平洋最大の国家にして、最大の市場。ポテンシャルは果てしない。しかし、政治やその独特な経済規制などを背景に現実的な候補には上がらない。事実、多くの米国系IT企業は撤退に追い込まれている。

②日本

中国に次ぐ経済国。政治不安も少なく、大手IT企業も軒並み進出している安心感がある。だが、英語が通じない。文化も商習慣も違う。人の採用も独特であり、労働者の権利が強い(万が一撤退となっても解雇規制が厳しかったりする)

③シンガポール

東南アジアの雄。アマゾンウェブサービスもデータセンターを置くなどその存在感はある。英語もそれなりに通じる。それにアジアの中心の位置するため、コロナ禍の前は出張が容易などといった地理的優位性もあった。だが、シンガポール自身の経済規模はゼロに等しい。

④オーストラリア

アジア太平洋唯一の英語圏にして、政治不安もなく自然災害も限定的な国。商習慣も同じとは言わないが、米国や欧州に日本や中国に比べれば近い。移民国家なのでバイリンガル人材も集めやすい。労働者の流動世も高く、雇用の規制も日本より厳しくない。

といった感じで、外資ITがアジア太平洋進出を決めるとき、私の経験則ではまずオーストラリアが候補に上がることが多い。そんなに大きくないベンチャー企業でも、米国・英国の次にオーストラリアに営業所を立てることは少なくない。

もちろん、日本に一発目のアジア太平洋地域営業所を設ける会社もある。

一方でこの選択はリスクがつきまとう。それは日本でしか営業ができないということだ。

これは明確な理由があり、オーストラリアやシンガポールにはバイリンガル人材が多い。これは資金力に乏しい新興企業には非常に魅力的である。中国語、英語、韓国語、マレー語、インドネシア語、タイ語など移民が多いそのお国柄から複数言語を操る人材が比較的低い難易度で手に入る。特にオーストラリアはそうだ。

何かというと、オーストラリアから東南アジアや日本に対して「リモート営業」をかけることができる。それで引きの強い国に次の営業所を立てにいく、といった戦略を持つ会社もある。

逆に、これは日本に営業所を設けるとなかなかできない。なぜなら日本で英語人材を始め、バイリンガル人材を集めるのは非常にハードルが高い。現実的な話、日本在住者で英語ができて実務経験があれば、大手IT企業から引く手数多となる場合が多いので、給与で争奪戦になるし、わざわざベンチャー企業に来るのは物好きくらいになる場合が多い。

ITでも「Lucky Country」

オーストラリアはその広大な国土、無限に眠る地下資源、政治的混乱・自然災害の無さ、そして大英帝国の歴史からの英語圏といった「ラッキー」な要因が多いため、「ラッキーカントリー」と皮肉を若干こめて呼ばれることがある。

これはIT業界が莫大なお金を産む現在にも当てはまる。

ぶっちゃけオーストラリアそのものの経済規模は、GDP世界13位であったりとそんなに大きくない。日本の6分の1の経済規模であるし、米国やヨーロッパに比べるともちろん限定的だ。

言葉を変えれば、オーストラリアそのもので多くの外資系企業、特にIT企業はお金稼ぎをしようと思って進出していない節はある。それより、オーストラリアのアジア太平洋における地理的・言語的・文化的優位性が目立っていると言えると思う。

この国は本当に、運が良い。

日本生まれ、海外育ち、2018年よりオーストラリア在住。2021年7月に第一子が誕生。普段は外資系企業でサラリーマンやってます。

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1件のコメント

  1. そろそろ 老後のために 株式で 資産を蓄えたいと考えています。

小島美晴 へ返信する コメントをキャンセル

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