日豪にて外資系企業で働いて思っていることをまとめてみます

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こんにちは。ジュークです。

本日は、日本とオーストラリアにて外資系企業(主に米国系)にて合計8年ほど営業として働いてきた経験をまとめてみたいと思う。

外資系企業と言えば「高級取り」「ドライな職場環境」「英語を使って仕事をガツガツこなしてる」「グローバルで飛行機で飛び回っている」みたいな印象から、実際に働いている人からは「日系企業以上に泥臭い」「そんな言われているほど給料は高くない」など様々な意見があるかと思う。

なににせよ、いろんな角度からまとめてみたい。

「本社と現地の橋渡し」

ポジションにもちろんよるが、大枠では私が思う外資系企業の海外拠点(日本支店やオーストラリア支店)に求めらている役割はこれに尽きると考えている。

これは角度を変えてみればわかりやすい話で、例えば日本企業がアメリカの駐在員に何を期待しているかを考えるとクリアだと思う。そう、その解は度合いの違いはあるにせよ、現地の情報を吸い上げ、現地顧客の開拓とフォロー、本社の思惑と現地のビジネスの活性化の3点、言葉を変えればつまり調整弁の役割だ。

外資系企業の海外拠点に勤めてる人間に求められることもこれに近い。単に本社がどの国にあるかだけの違いだ。

なぜ橋渡しが必要なのか?

ある企業が異国でビジネスをしようと思う時の障害として、単純なところで行くと第一に「言語」である。例えば本社がアメリカの会社が社内で使う言語はもちろん英語だし、マネジメント層ももちろんアメリカ人で、例えば展開しているサービス・製品についての社内資料も英語のみだったりする。そういった会社が掲げるポリシーももちろんアメリカ式になるし、注目する経済動向などもアメリカ中心となる。

オーストラリアは同じ英語圏であるので、純粋たる言語の壁は存在しないが日本市場をはじめとする非英語圏が相手となるとこの壁は非常に大きい。日本を例に挙げると、昨今増加傾向にあるとはいえ、ビジネスレベルに英語を扱える人材プールは諸外国に比べれば限りなく小さい。もちろん同様の英語レベルを旧英国植民地だった香港やシンガポール、さらには同じアルファベットやある程度の共通文化を持つ欧州圏のドイツやフランスと比較し求めるのは少々違う気もするが、「英語レベルの限定さ」の事実としては変わりはない。

さらに、アメリカ企業の製品を日本で売ろうとすると今度は「文化の違い」「市場の嗜好の違い」などが生じる。シンプルに考えると、なぜ日本では米国のフォードやGMのクルマがそれほど走っていないかを考えていただくとわかりやすいと思う。

文化の違いはその人事制度や労働慣習にも如実に現れる

例えばよく言われていることだが、米国企業は同業界・同ポジションでの経験を重視する。これは日本と違い、新卒や業界経験の乏しい人材を育てるという概念が非常に限定的だ。もちろん外資系企業でも入社が決まればトレーニングや手厚い研修を受けることは可能だし、業務遂行のためのサポートを求めることもできるが入社時点での経験値は非常に重要視されるといって良いだろう。

よって、もっとも効率的にそういった人材を入手できる競合他社もしくは協力会社からのヘッドハントなどがここオーストラリアでも盛んである。私も現に、オーストラリアで働いて1−2年足らずの時点で、競合他社の人事部からLinkedinにメッセージが届いたことも少なからずある。このように、効率的か否かは別の議論だが多くの外資系企業はそうやってオーストラリア支店の頭数を揃えていく。一方で昨今変わってきているとはいえ、いまだに転職に保守的な日本社会ではこの手が米豪ほど通じない。まとめると、労働慣習が異なるため採用の概念、さらには働くことへのカルチャーギャップが生じる。

この手の異文化あるあるトピックをこのブログにて全てを語るつもりはないが、簡単にまとめると「本社が進出したいマーケットがあるが、異文化圏でよく実態がわからない。よって現地支社で採用する人間は私たちにわかるように説明できる能力がなければ困る」というニーズに落ち着く。よって、オーストラリア法人や日本法人といった海外支店の人間には、現地語と現地市場での経験はもちろん本社の意思を汲み取るコミュニケーション能力が必須となる場合が多い。

もちろん大手外資系企業、特に製造業の会社は日本への進出が歴史的にも早く、50年や100年の歴史を有する企業も少ないはない。こういった会社ではグローバル経営の中でも日本支社がきっちりと存在感を示しているケースが多いので、前述のカルチャーギャップやこの後に触れるいわゆる「面倒ごと」への耐性を有している場合も比較的多いと思う。

「非英語圏」の経済大国

私の経験上、アメリカ企業が国外進出しようとなると業界により異なるケースももちろんあるが、候補に上がる国は少なからずパターン化している。進出先がヨーロッパの場合はその多くが英国(EU離脱後はわからないが)。アジアはシンガポール・オーストラリア・インドが目立つ。この国々の共通点は英語圏であることだ。

同じ英語圏ということで、まずコミュニケーションが取れる。また、全く同じとは言わないが一定の共通基盤文化を持つことがある程度想定できる。例えば、英語圏においては(つまり旧英国植民地・影響圏)ビジネスにおいては「契約社会」であることや前述の転職・ヘッドハントがある程度一般的であること、そしてポジション採用であることなどだ。これは本社と比較的近いカルチャーを有するということで人事の面でも採用後のトレーニングや期待される職務遂行などの面で、採用する側もされる側にとってもいろんな意味で「わかりやすい」関係となる。

また、営業的な側面では同じ言語圏ということでウェブサイトや製品説明資料の翻訳作業が不要だ。自国のサイトを現地に合わせてSEO強化すればそのままウェブサイトなどは流用できるので、初期投資のコストも限定的となる。

しかし、日本とはじめとする非英語圏で商売をしようと思ったらそうはいかない。

日本の場合、少子高齢化で市場が縮小している・経済成長が停滞しているとはいえ世界第3位の経済大国であり、世界で3番目に多いFortune500企業を有する巨大市場であることには変わりはない。よって、多くの外資系企業にとって無視できないマーケットであることは否定できない。

しかし英語圏でないことから、多くの壁が存在する。

まず簡単なところでいくと、言語が違うので本国で使っているウェブサイトや製品説明資料が意味をなさないことだ。もちろん日本でも英語をビジネルレベルで人材プールは年々大きくなっているとはいえ、共通言語はどこまでいっても日本語である。多くの日本人ができれば日本語で会話し、日本語のウェブサイトを読み、日本語のメールでやりとりし、困ったときは日本語で相談できるビジネスパートナーを欲する。これは別に驚くことではなく、ごく普通のことだ。

よって、日本進出をもくろむ外資系企業は自社サイトや製品説明資料の和訳の必要を迫られる。陳腐な言い方だが、インターネットがここまで普及した現在、ネット上でのプレゼンスのない企業はその社会認知において大きなハンデを追うのは言うまでもない。

もちろんAI技術や翻訳サービスが増えてきたので、一時期に比べればその労力はだいぶ簡易化されたと言えるが、時間とお金がある程度かかることに変わりはない。さらにもし日本人社員が自社に存在しない場合、仮に翻訳業者に依頼したところで納品された和訳資料が「正しい和訳なのか」を判断することも難しい。そうなるとそもそも和訳に時間とお金を投じることにクエスチョンマークが灯る

何をしようとしていたのかわからなくなった図

多くの外資系日本支社に勤める社員が、社内外資料の「和訳」に多くの時間を費やしているのにはこういう背景がある。

さらに一般論として、言語圏が異なれば文化圏も異なってくる

私の営業としての視点でいくと、アメリカやオーストラリアのセールスはいわゆる「ゴリゴリ系」が多い。いかに自社サービスが優れているか、いかに多くの既存ユーザーがいるか、いかにあなたが自社サービスを採用しないと損をするか、投資回収率はどれくらいかなどといった「セールスピッチ」を相手が聞く耳を持つまでメールや電話で押しかける。過去に勤めた会社には1日5回電話しろ、電話に出なければ留守電を残せと命令されたこともある(個人的にはやりすぎではとは思う)

さらに、米国や豪州では個人の連絡先(勤務先のメールアドレスや電話番号)の売買や入手がそれほど難しくない。Linkedinも一般普及していることはもちろん、ネットで公に個人情報を販売している会社も無数に存在する。そういったところを活用し営業リストを構築し、ガシガシとメールや電話でアプローチしていく。これが一般的なやり方だ。

一方の日本では、「見知らぬ人」からの電話やメールは概ね嫌がられるし、個人情報の売買は原則的に違法であると認識している。ある調査によればLinkedinの普及率も労働人口に対して日本は2%程度と、アメリカの60%、豪州の50%と比べるとかなり限定的である。したがって、営業先ターゲットとなる個人の連絡先・アプローチ方法をネットで入手することが非常に難しい。よって多くの企業は展示会に出展したりするなどし、新規の見込み顧客の連絡先を合法的に入手する。

日本市場に詳しくない外資系企業の営業責任者にとって、この日本の商習慣は異色に映ると感じている。展示会に出るのもお金がかかるし、人手ももちろん必要となる。さらにそうそう毎月展示会が行われているわけでもないし、そもそも日本語ができなければ自分でなんの展示会がいつ開催され、どういった人たちが来場するのかさえ調べることもできない。

長くなるのもあれなので、非英語圏への進出は簡単にまとめると「面倒ごとが多い」となる。つまり日本支社の社員はこういった本国と現地の「調整弁」として本社の面倒ごとの緩和と潤滑化の役割が期待される。

本国からみた「重要度」

外資系企業で働くにあたり、その国での成功が本社にとってどれほどの戦略的重要性があるのかは日々の仕事および自分のキャリアに大きな影響があると考える。

私の経験からいうと、オーストラリアは米国IT企業にとって「アジア太平洋地域進出の第一歩」として捉えれていると感じる。前述の通り、同じ英語圏で英国文化圏ということでの安心感があるので、遠く離れたアジア太平洋で商売をしていく拠点としての価値がある。さらに山火事や人喰いサメなどを除けば自然災害も限定的であるし、地政学的なリスクも少なければ、政治的混乱もほとんど存在しない。つまり安定している経済・社会基盤のある国なのだ。

そうしたオーストラリアで現地法人を切り盛りするカントリーマネージャーを雇用し、文化の違いや時差のある中マネジメントを経験することでよりグローバルな企業になるための知見を積んでいく。

しかし、豪州経済はされど世界13位程度の大きさである。決して大きな経済圏ではなく、人口も2500万人程度と米国の1割程度の規模感に止まる。豪州だけで多大な売り上げを見込めると踏んでいる外資系企業は実際少ないと思う。

なので、多くのIT企業はオーストラリアを拠点としアジアへの進出の足掛かりとする。同じ英語圏のシンガポール、フィリピン、インドなどがまず最初の目標となることが多い。

中国はさまざまな規制から、多くの米国IT企業にとっては進出したいができない市場の1つとなっていることから、アジア最大の市場は日本である。

しかし前述の通り、日本は英語圏ではなく、某米国の市場調査企業によれば日本のIT市場の成熟度は米国の10〜15年は遅れていると言われているなど少々特殊な市場である。繰り返しになるがアメリカ企業にとって「面倒が多い」市場に変わりはない。

そんな市場に本格的に腰を据えて攻め込んでいくのか。それとも、ちょっとつついてみてうまくいったら攻め込むのか。これがその企業の「戦略的重要度」を物語る。

末端の営業としての立場から言うと、前者の会社で働くのは単純に楽しいし、自分のためにもなることが多い。新規事業の確立や、日本でのパートナー企業探し、そしてマーケティング活動など多くの投資が積極的に行われることもあり自身の経験・経歴にも非常にプラスな側面が強い。また本社が重要視していることから、社内での注目度も高い。こちらの主張が社内で通ることも比較的多く達成感も得やすい。

逆に後者の会社で働くと、その経験はとても苦いものになる。そもそも日本への進出がその会社にとって戦略的重要度を持たないため、投資を積極的に行わないケースが多い。具体的に言うと、前述の面倒ごとに向き合おうとはしないパターンがほとんどだと思う。前述のウェブサイトや資料の和訳作業も行われない、追加リソースが必要な場合も後回しにされる場合も少なからず存在する。

終わりに

一見華やかで働きやすく給与も高水準と言われる外資系企業(多くの場合にアメリカ企業を指す)の内情を私の視点からまとめてみた。確かに日本企業と比べると給与水準は高いと思うし、本社の規模感が大きいと扱うサービスの規模感も大きく、スケールの大きい仕事ができるといったメリットもある。

同時に、本社から見た日本市場の「面倒ごと」を人的に裁く必要があったり、日本のことをいまいちわかっていないマネジメント層に日本の商習慣のイロハを説明しないといけなかったりと大変なことも多い。そういった意味も含めての給与水準なのかもしれないが。

私はこれまでいくつかの外資系企業に勤めてきて、幾度かその企業の日本進出や事業拡大に営業として携わってきた。その中でもっともその会社での働きがいを決めるのは前述の「戦略的重要度」であると思っている。当たり前のことだが、本国が腹を括って「日本で何がなんでも成功するんだ」と息巻く環境は、プレッシャーももちろん存在するが働きがいは段違いだ。また、自分の主張に耳を傾けるキーパーソンも社内に増えるため、そういった意味での重責を背負いつつ仕事を楽しむという経験もできる。

逆に、重要度が低い会社で働くとただの歯車の1つに成り下り、ネット界隈の表現を借りるとすると末端の「ソルジャー」になりさがる。日本のアジアでの重要度が中国が東南アジアの経済成長とともに相対的に低下している事実もある。会社選びをするときはこの点にも注意が必要だと考える。

それでは、今日はこの辺で。

Juke

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