オーストラリアの大学を卒業して就職活動などを通して思ったこと

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こんにちは。ジュークです。

今回は、私のオーストラリアの大学に通った経験をお伝えします!

海外留学協議会の2017年度調査によると、日本人留学生が一番多いのはアメリカ(17,894人)、ついで2位オーストラリアの17,076人となっており比較的人気な留学先となっていると思います。

すでに卒業から10年近くが経過しておりますが、自身の経験を綴ってみたいと思います。この短期留学やフル留学、交換留学をお考えの方のご参考になれば幸いです。

基本情報

まずは私の留学概要からお伝えします。

  • 留学期間:学士号(Bachelor)をフルで3年間
  • 在籍年:2010年代前半
  • 留学先:Group of Eightのうち1校
  • 学部:Faculty of Arts
  • 専攻科目: 歴史学、政治学
  • 卒業高校:海外のインターナショナルスクール卒業
  • 卒業後の進路:日本で就職活動。

私の留学していた大学には「日本国籍所有者」がうろ覚えで確かな統計をみたわけなく口伝えの程度ですが、200人ほどが在籍していたと記憶しています。もちろんこの数字には豪州人とのハーフ、現地で生まれ育った方も含まれるので、日本からの留学生という定義では肌感覚20−30人といった感じです。全校で数万人規模の大学に通っていたので少数派でした。

留学まで

私は海外のインターナショナルスクールにて国際バカロレア資格(IB)を取得して、オーストラリアの大学に進学しました。

提出した書類は国際バカロレア資格の卒業書・成績書、高校4年間の卒業(アメリ系の高校を卒業したため高校(Highschool)は4年間)、そしてTOEIC(当時は非英語圏出身者は必須でした)

私は英語を授業言語とする学校を卒業したため免除されましたが、日本を含む非英語圏の高校を卒業した学生の多くは、大学指定の英語学校に半年から知る限り2年ほど通うのが一般的でした(2022年現在はわかりません)

また個人的にオーストラリアを選んだ理由は、幼少期から海外在住のため大学も海外、特に英語圏に進みたかった(同級生のほとんどがそうであったように)こともあります。当時は為替レートも日本円が強く、学費がアメリカに比べると比較的優しいこと。過去オーストラリアに住んでいたので親しみがあったことなどが挙げられます。

在学中

オーストラリアの大学は日本の大学と違う点がいくつかありますが、一番大きなものは「入学は比較的簡単、卒業は厳しい」ということでしょうか。日本は厳しい大学受験はありますが、卒業は留年などを除けば、そんなに難しくないと言えるのではないでしょうか。

かなり主観的な表現にはなりますが、オーストラリアの大学に入るのは正直そんなに難しくありません。実際に、出願基準の足切り点数をみたり、必要条項をみても世界ランキングで同じくらいのアメリカの大学に比べても優しいと言えると思います。

しかし、卒業は難しいです。

私の通っていた大学は、卒業率を6割前後にするという隠れポリシーがありました。簡単にいうと、全科目で合格するのは6割で、4割は必ず落ちる(=すなわち卒業できない)というものです。従って、成績も相対評価でした。大学の言い分は「卒業生のレベルを一定に保つため」というもので、事実1年目に200人規模であった授業も2年目には100人を下回り、3年目には30人くらいしかいなかったことは今でも覚えています。

落ちた4割の学生はどこへ行くのか?と思われたかと思うので、知る限りでお伝えすると、当たり前かもしれませんが下記の4つのいずれかと考えます。

  • 他の大学へ編入
  • 他の学部へ転入
  • 休学
  • 退学

オーストラリアの大学はほとんどが国立大学(私立はかなり少数)なため、大学間の編入も比較的容易なようです(実際に私はやったことがないのでわかりませんが)ので、自分に合わなかったり、他に勉強したいことが見つかった学生は他校へ編入するという選択肢があります。

オーストラリアの大学のカリキュラム

話を戻します。

私の知る限りでは、Bachelorである限り大学や専攻やFacultyに関わらず、1年が前期と後期で分かれており、各期に4つの科目(Unit)を受講します(現地の学生でパートタイムは1ユニットからなど選択肢がありますが、留学生は基本4つをフルで受講するはず)

各ユニットにLectureとTutorialがあり、概要は以下の通り。

  • Lecture (講義):2時間程度の一方通行の講義。
  • Tutorial : 1グループ10人程度のディスカッションするコマ。1時間程度。

レクチャーは日本の大学でもある講義で、教授がその週のトピックについて2時間ほどベラベラ喋ります。出席義務は設定されていない場合が多く(課す教授もいましたが)、「参加したければする」が共通認識でした。こう書くと「なんだ楽ちんそうだね〜」と言われる場合もありますが、各ユニットでは辞書レベルに分厚いリーダー(Reader、教授がそのユニットを学ぶために必要な文献などをまとめた分厚い図書)を読み抜く必要があります。講義はあくまでそのその週の文献の説明的な側面もあるので、必要な文献を読まなかったり講義に出席しないとたちまち置いていかれる現実もあります。

チュートリアルは少人数に分かれてのディスカッションの場です。8割以上(うろおぼえ)の出席率がないと「落第」だった記憶です。さらにチュートリアルでは、ネイティブのオーストラリア人に負けない発言力とパフォーマンスを発揮していかないと点数を稼げない現実もあります。

さらにだいたい4週間に1回くらいのペースで課題(Assignment)が科されます。課題の内容も、Essay (2000文字前後の小論文)が最もポピュラーで、他にグループ課題やプレゼンなど様々です。期末にはほぼ全教科にて試験(final exam)が行われ、科目にもよりますが2時間程度筆記試験であったり、プレゼンであったりをします。

ただでさえ第二言語で受講し課題をこなさなくてはいけない。さらに卒業率の制限もある。今思い返しても、なかなか過酷な環境であったため学期中は勉強ばかりしていました。日中は授業とチュートリアル、授業後は図書館で夜10時ぐらいまで勉強。落第すると卒業が先延ばしになりますし、何故高い学費を払ってくれている両親に申し訳ないという気持ちが強かったですね。

日本で就職活動

オーストラリアの大学を卒業、日本の就職活動に有利か?という質問は時々いただきます。結論から言うと、オーストラリアだから有利になることは正直あまりないです。

私が日本で新卒採用の就職活動をしていた2010年代前半での話にはなりますが、オーストラリアの大学を出たといってプラスに働いたことはあまりなかったです。私の完全なる主観ですが、集団面接などで面接官の反応が一番良いのはアメリカの大学の卒業者だったような気がします。オーストラリアはあくまで「アメリカ以外の海外大学」という一括りにされていた気がします。私のなんだかんだで「英語ができる人材」枠で就職することとなりました。よくも悪くも。

この理由は様々だと思いますが、アメリカの大学のイメージが日本社会において比較的良いこと。オーストラリアのイメージは真面目な話「コアラ」「カンガルー」「砂浜」などバケーションが当時とても強く、「真面目に勉強したんですか」と面接官に聞かれたことも少なからずありました。現実的なところでは、日本企業の採用担当者の世代に「オーストラリアの大学の現実」を熟知されている方は非常に少数のようでした。

もう1つ、オーストラリアの大学ヘ行くことを知っておくべきことが卒業時期です。オーストラリアは3月始まりの12月終わりの学期です。一言でいうと、日本の就職活動シーズンとほとんど合致していません。かろうじて重なるのは、6−7月のオーストラリアの冬休み、つまり日本の夏休みに東京で行われる某海外大学卒業者向けフェアぐらいです。もちろん、受講している科目や試験のタイミングなどにも左右されるので一概には言えないところはありますが、個別に就職活動していく必要があります。

先述の通り、当時の「日本人留学生」をターゲットとする就職活動フェアはアメリカへの留学生を主軸としているケースが多いです。よってオーストラリア留学組はそういうところでは少し損をしていた気がします。

というわけで、日本の就職活動という視点では難しい現実を感じました。

でも私はオーストラリアの大学を出たことを決して後悔していません。

オーストラリアの大学へ行ってよかったこと

1つは自分の好きな勉強を好きなだけできるという点でしょうか。日本の大学でも言えることかもしれませんが、勉強をしたければいくらでもリソースが揃っているので、自分で満足できるまで勉強する環境があります。

もちろんオーストラリアは英語圏であるので、アメリカやイギリスの文献ももちろん、その言語的な優位性をいかして世界中の文献が揃っているので知的好奇心がある方にはたまらない環境かもしれません。

また、欧米教育がなされているため、人前で喋る訓練(プレゼンやスピーチ)の機会も多いです。これは仕事をしてから本当に良い経験だったと思います。

私は歴史学科だったため、多くの文献を読んでそれを自分の意見も交えて、論理的かつ建設的な議論をする訓練を多く受けれました。これは仕事をする上で重要なスキルだと考えています。

私は物心ついた頃から欧米教育を受けてきました。欧米における歴史教育は「答えのない物事をどう最適解に導くか。無数ある意見をどうまとめるか」という教育と考え方を仕込むものだと感じています。例えば、

  • イギリス帝国の北米やオーストラリアの植民地化は正当化できるか
  • 第二次世界大戦での日本への原爆投下は「正しい」判断であったか
  • 米国の朝鮮戦争やベトナム戦争への介入の妥当性

など。決してどのトピックも、絶対的な回答はなく立場を変えれば答えが変わるようなものばかりです。そんな中で、どうやったらより多くの人が納得する分析と論理を作れるか。と言う教育を受けれたのは本当に貴重でした。

この経験は現在IT企業で働いていても感じます。IT企業に限らずですが、仕事をしていればいろんなことをいろんな人が言いますよね。でもいちいち全員に耳を向けていたら何もできない。そこからどうやって自分なりの意見を持ち、その正しさを証明していくスキルはどこでも活かせると思いますね。

最後の良かったことは、同じ志を持つ友達ができたことでしょうか。日本人という観点では、日本人でありながら日本の大学にいかず、海外大学その中でもオーストラリアを選んだという点で何かと気の合う友達が多くできました。その関係は今も続いていますし、たぶんこれからも続いていく関係であると思います。一生の財産ですね。

最後に

なんだかマイナス要素ばかりお伝えしてしまったかもしれませんが、私はオーストラリアに留学される方で理想と現実につまずき途中帰国してしまった方や、心を病まれる方も少なからずみてきました。なので、決して「オーストラリアは最高だぜヤッホー!」なスタンスではなく、現実的なところをお伝えできればとは思いました。

アメリカやイギリス、カナダに比べると日本人の留学先としては華やかではないかもしれませんが、オーストラリアも良いところです(小学生並みの感想)

もちろん、ブログに記した通り、向き不向きはあると思います。私も海外育ちとはいえ、各国それぞれに事情があるのは当たり前で豪州での大学生活に適合するのに1年はかかったと感じています。これは言語だけではなく、人間関係や文化などもありますね。

オーストラリア留学。すごい単純なところ考えてみると、日本との時差がほとんどない、フライトとも9時間程度と欧米に比べて近い。気候も比較的暖かいというメリットもあります。2020年現在は、ユニクロや無印良品なども進出していますので生活面でも日本と遜色ない日々が送れるかもしれません。

ぜひ豪州留学、検討してみては。

日本生まれ、海外育ち、2018年よりオーストラリア在住。2021年7月に第一子が誕生。普段は外資系企業でサラリーマンやってます。

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